理由はなんであれ、企業の業績がおもわしくない、且つ赤字になるのであれば、さまざまな経営改善努力を行うことが必須。

これは民間企業であれば一般的なこと。
賞与の減額、または「0」。給与水準を下げるのが一般的ではなかろうか。
それでも乗り切れない場合、企業存続のため人員削減(リストラ)など、さまざまな経営努力ができるはず。

今回、関西電力のケースではそれらのことを別問題として考え「値上げありき」で考えている。
これでは消費者の理解を得ることなど無理だろう。

まず、己の身を切る対策を行い、そのうえでこのような話が出てくるようであれば、まだ理解はできるが。

総括原価方式の撤廃、発送電分離、この2点は必須。
原子力マネーに群がる原子力ムラ住民やシロアリの駆逐。これも必須。

東京電力が電気料金の値上げを行い、次は関西電力か。
日本中の電力各社も、この値上げの動きに便乗してくるのは明らか。

こんな一方的な値上げに対し、素直に「はい」という人は稀だろう。



関西電、値上げ方針表明で死守したいもの

「このままでは電力の安全・安定供給に支障をきたしかねません」。関西電力の八木誠社長は10月29日に開いた2012年4~9月期決算発表の会見で、険しい表情を浮かべながら電気料金の値上げ方針を正式表明した。東日本大震災以降、一貫して「値上げは考えていない」と繰り返してきた関西電が姿勢を一変させた背景には、「13年3月期中に値上げ申請に動かないと、会計監査人から繰り延べ税金資産(繰税)の取り崩しを迫られるのは必至」(幹部)という厳しい現実があった。

 4~9月期連結決算は、上期としては過去最悪となる1167億円の最終赤字。しかし四半期ごとの最終赤字幅をみると、4~6月期の995億円から7~9月期は172億円へと大幅に縮小した。これは7月に大飯原子力発電所3、4号機(福井県おおい町)が再稼働し、火力発電用の燃料費負担が軽減したからだ。「原発がもう1基動けば損益トントンに持っていける」(経理部門幹部)との試算もあり、「値上げをしなくても、なんとか当面、財務面で持ちこたえられるのでは」(首脳)という期待も関西電の社内に根強い。

 しかし問題は、9月末時点で約4300億円(単独ベース)ある繰税の取り扱いだ。繰税は税金の前払い分のことで、将来的にその前払い分に見合うだけの課税所得を得られない収益見通しになれば、取り崩しを迫られる。

 関係者によると、関西電の会計監査を担当する監査法人は「14年3月期以降の収益改善策を具体的に示さなければ、繰税の取り崩しは不可避」との見解を示唆している模様。実際、泊原発の再稼働見通しが立っていない北海道電力は12年3月期決算で、前の期末時点で535億円あった単独繰税を全額取り崩したという、関西電にとっては実に恐ろしい前例もある。

 仮に今期、関西電が繰税を全額取り崩すと何が起こるのか。前期末時点の単独純資産は1兆1567億円(期末配当支払後)。今月24日に開かれた政府の需給検証委員会で示された経済産業省の試算によると、関西電の今期は5820億円の単独最終赤字(原発稼働2基が前提。特別損失などは織り込まず)の見通し。これに繰税の全額取り崩しが重なると、今期末の単独純資産は約1500億円しか残らない計算になる。大規模な資本増強でも実現しない限り、来期中の債務超過転落が待っている。

 ある関電役員は「債務超過リスクが迫って信用不安が広がれば、今夏にやっと正常化した社債発行が困難になるだけでなく、金融機関からの借り入れにも支障が出て、燃料費や設備投資に必要な資金調達が難しくなる。企業としての『死』を意味する」と危機感をあらわにする。

 経産相への値上げ申請は、全従業員を対象とする人件費カットに代表される「聖域のない」(八木社長)コスト削減策が不可欠となる。グループ会社や取引先企業を潤してきた設備投資や修繕費も圧縮を迫られる。関西電は株主責任を明確にするため、13年3月期の年間配当を創業初年度以来61年ぶりに無配とする方針だ。先に値上げを実施した東京電力は、消費者から激しい反発を受け、追加的なリストラに追い込まれるなど、値上げに踏み切ることで電力会社が失うものは、決して少なくない。

 こうした様々な弊害を覚悟したうえでの値上げ方針表明は、まさに企業存続のための「苦渋の選択」(八木社長)。関西電は今後、近い将来に予想される衆院総選挙の行方や、原発再稼働のカギを握る原子力規制委員会の動向をにらみつつ、具体的な値上げの実施時期を探る日々が続くことになる。

nko
関西電力の大飯原発(手前から)4号機、3号機(福井県おおい町)=関西電力提供

2012/10/31 6:00 日本経済新聞